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【最底辺のポートフォリオ ――1日2ドルで暮らすということ】レポート

【最底辺のポートフォリオ ――1日2ドルで暮らすということ】
ジョナサン・モーダック (著), スチュアート・ラザフォード (著), ダリル・コリンズ (著), オーランダ・ラトフェン (著), 野上 裕生 (監修), 大川 修二 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4622076306/

○この本を一言で表すと?

 貧困層の実態に徹底的に踏み込んだ開発経済学の本

○この本を読んでよかった点

第2章 骨の折れる日々

・収入の低さだけでなく、その不定期さが問題であることは他の本でも見たことがあって、納得しました。

第3章 リスクに対処する

・保険等のリスク管理について、リスクの種類が多すぎて保険をかけるにはコストが見合わないというのはなるほどと思いました。
南アフリカで葬儀保険が成立するのはそれだけ確率もインパクトも大きいリスクだからかと納得しました。

第4章 こつこつと積み上げる――まとまった資金を作る方法

・貧困世帯にとって「借入」と「貯蓄」が「まとまった資金を少額の定期払にする」という意味でほとんど似たような行為に見えるという考え方は面白いなと思いました。
「借入」の柔軟性と「貯蓄」の信頼性のなさの対比が先進国の感覚と違っていて、同じ見方をすると見誤ってしまいそうだと思いました。

第5章 お金の値段

・貧困層の地元の金貸しの「利率」は「手数料」としてみた方がいいという考え方はなるほどと思いました。
利率が高くても「返済が超短期」「遅延しても超過利息があまりつかない」「借り手の状況に応じて柔軟に対応」ということを考えると「利息」で考えるより「手数料」で見る方が確かに納得しやすく、長期返済のマイクロファイナンスより地元の金貸しの方が利息全体が安くなることがあるというのも納得です。

第6章 マイクロファイナンス再考――グラミン II ダイアリー

・グラミン銀行が2001年に大きな制度改革を行っていたということを初めて知りました。
「画一的な制度」(連帯保証強制、返済方法固定、継続借入強制、逸脱者復帰困難)から「柔軟な制度」(連帯保証撤廃、継続借入撤廃、融資期間を複数設定、通帳性貯蓄預金導入、年金貯蓄導入)へ。
いろいろな本に出てくるマイクロファイナンスの制度内容にブレがあったのは制度改革が行われたことが書かれていなくてごちゃ混ぜになっていたからかと思いました。
この本の2~5章で洗い出されたニーズにかなりの部分対応できる制度になっているなと思いました。
さらに現状の「事業向け貸出限定(ただし、実態は柔軟)」から「一般貸出開放」に向けて変革される話もあるらしいので、今後の状況が楽しみです。

付録1 ポートフォリオの裏話、付録2 ポートフォリオ抜粋

・統計のサンプルとしては数が少ないですが、バングラデシュ・インド・南アフリカの約300世帯を対象に1年間15日おきに調査を続けたフローの実態は、この手法でないと得られない貴重な資料だと思いました。
最初の3ヶ月程度を信用を得る期間として、実質的に15ヶ月ほどかけて調査しているというのもなかなか慎重で信頼性のあるやり方だと思いました。
また、そうして得られた調査結果の定性的な内容(家族の状況変化など)が生々しくてリアルだと思いました。

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