【やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける】
アンジェラ・ダックワース (著), 神崎 朗子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478064806/
○この本を一言で表すと?
GRIT(やり抜く力)について様々な方向から書かれた本
○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
・「やり抜く力」の定義や計測方法、その効果の研究や訓練方法など、多面的に書かれていて興味深かったです。
サンプル数や母集団の適性性に疑義があることなど、研究としてはまだまだ不足していることなどが率直に述べられているところに好感が持てるなと思いました。
何かを達成した結果、を導き出すための力、をつけるための根源的な能力、みたいな間接的な能力で、結果を計測しても他の様々な要因を排せないだろうなと思いました。
・自身が根性論を実践してきた方ですが、それを正しい方法だとは考えておらず、一時的な根性だけでは足りないと明確に書かれていたこの本を読んで少しホッとする思いがありました。
根性による一時的な努力より、継続的な努力の方が重要だと何となく理解していながら実践できていませんでしたが、この本を読んで「結果を出すまでやり抜く力」を養う大事さを学べたように思えました。
第1章 「やり抜く力」の秘密
・米国陸軍士官学校や「スペリング・ビー」で結果を出した者が、IQや測定された能力で優秀と判断された者とは限らず、「やり抜く力」がある者ということだけが有意だったと書かれていました。
第2章 「才能」では成功できない
・著者が教職に就いていた時に、呑み込みが悪くても授業の内容に集中して楽しんでいる生徒が結果を出していたことなどが挙げられ、多くの人が「努力家」よりも「天才」を評価する傾向にあることを実験結果と共に示していました。学校や企業など、様々な場所でそのバイアスがあるそうです。
第3章 努力と才能の「達成の方程式」
・すごい人を見ると、その人の努力を見るのではなく、「才能がある」「天才だから」と自分とは違う種類の人間とみなすことが、自分を楽にしたいからだと書かれていましたが、本当にその通りだと思いました。
これまでに会ってきた人の中で、そういった傾向のある人はかなりの数になると思います。
・著者のざっくりとした方程式「スキル=才能×努力」「達成=スキル×努力」で「達成=才能×努力×努力」として、努力こそ才能より必要なものであるとしているのは、この方程式の数字が正しいかは別として、実感として近いように思えました。
第4章 あなたには「やり抜く力」がどれだけあるか?
・「ものすごくがんばること」と「やり抜くこと」は異なると書かれていて、自分が前者のタイプだけにその通りだなと実感として思いました。
短期間に努力することより、長期的に取り組み続ける方が困難で、結果が出るだろうなと思います。
・グリット・スケールをやってみて、最初は自己評価のみで考えるとかなり低い点数になりましたが、「周りと比べてどうか」という尺度でやり直すと平均より上くらいにはなりそうでした。
・何でもやり抜く、というのはおかしな話で、自分の動機の中で高位の大きなものに繋がる動機、譲れない動機に対してやり抜く、というのは重要な考えだと思いました。
司馬遼太郎の小説で、知行同一の陽明学を信奉する者が所与の条件に異議を挟まずとにかくやり抜くケースが何例か書かれていて、どこか正しいとは思えなかったのですが、自己啓発オタクと呼ばれるような人は「とにかくやり抜く」という方向に走りそうで、「何を」やり抜くかという視点は重要だなと思いました。
第5章 「やり抜く力」は伸ばせる
・やり抜く力は伸ばせること、年齢層の高いものほどやり抜く力が強いことなどが書かれていました。
やり抜く力の鉄人に共通する4つの要素として「興味」「練習」「目的」「希望」が挙げられていました。以降の4章でそれぞれの要素について解説されていました。
第6章 「興味」を結びつける
・やり抜く対象に対して興味を持てるかで実際にやり抜けるかが変わってくること、いろいろなことにチャレンジしてその興味を持てる対象を探すことが大事だということが、Amazon創業者のジョフ・ベゾスなどの事例を挙げて説明されていました。
第7章 成功する「練習」の法則
・練習することが大事だが、「意図的な練習」でなければ効果がでにくいということが書かれていました。
単に取り組むだけでなく、結果を出すために何が必要かを考えて、その目的に対して集中して練習することで密度が変わることはその通りだろうなと思いました。
第8章 「目的」を見出す
・目的の目線の高さ、高次の目的に繋がっている活動かどうか、社会のためになるか、などの広い目的を持って取り組む方がやり抜く力に繋がると書かれていました。
第9章 この「希望」が背中を押す
・楽観的に捉えられるか、失敗の中にも成功に繋がるものを捉えられるかどうかがやり抜くことに影響があるそうです。
継続しやすいかそうでないかが物事の捉え方次第というのは、確かにそういう面もありそうだと思いました。
第10章 「やり抜く力」を伸ばす効果的な方法
・厳しい家庭で育てられたと言われているアメリカン・フットボールのスティーブ・ヤングと緩い家庭で育てられたと言われているコメディアンのフランチェスカ・マルティネスの例を挙げ、それぞれが実際には要求が厳しく、かつ支援を惜しまなかった家庭だったことが挙げられていました。
要求が厳しく支援を惜しまない育て方を「賢明な育て方」、要求が厳しく支援しない育て方を「独裁的な育て方」、あまり要求しないが支援を惜しまない育て方を「寛容な育て方」、要求も支援もしない育て方を「怠慢な育て方」という4象限のマトリクスで書かれていましたが、子育てだけでなく、様々な教育分野で活用できる考え方だなと思いました。
第11章 「課外活動」を絶対にすべし
・家族ではどうしても甘くなってしまうことから、厳しくかつ子供のことをよく見てくれる指導者のもとで「課外活動」をさせることが「やり抜く力」を育てることに繋がると書かれていました。
特に「2年以上」「頻繁な活動」の課外活動が「やり抜く力」と有意にあるのだそうです。
第12章 まわりに「やり抜く力」を伸ばしてもらう
・どれほど才能があっても、どれほど努力をしても、環境が揃った場所で同様に才能を努力で伸ばしている者には敵わないという、ある意味では身も蓋もないですが、至極道理だなと思えることが書かれていました。
第13章 最後に
・やり抜く力の高い人は人生の幸福度も高いというのは、そうだろうなと思えました。結果を出せるまでやり抜くこと、努力して結果に繋がって報われることが幸福であることは自明であるように思えました。
○つっこみどころ
・Amazonの検索でも書店の検索でも「GRIT」が題名になくて検索に引っ掛からなかったのですが、他の出版社でGRITをタイトルに載せた本が出版されてから改題されて邦題にもGRITが付くようになっていました。
出版社のダイヤモンド社の必死さが伝わってきました。