【イノベーションへの解】
クレイトン・クリステンセン (著), マイケル・レイナー (著), 玉田 俊平太 (監修), 櫻井 祐子 (翻訳)
https://www.amazon.co.jp/dp/4798104930/
1.成長という至上命令
「成長」・・・株価に「成長率」が織り込まれている。
織り込まれた成長率により実際の成長率が・・・高いと株価上昇、同じだと株価維持、低いと株価下落
大規模な企業が成長を続けること自体無理が生じる(一度失敗すれば再び軌道に乗せるのは困難)
イノベーションを方向付けるのは「プロセス」
予測可能性は優れた理論から①対象を正しく記述②正しく分類③理論を明確に打ち出す
属性の区分は相関関係のみで因果関係に踏み込まない。⇒状況の区分なら因果関係まで踏み込む。
2.最強の企業を打ち負かす方法
・持続的イノベーションの状況では、ほぼ必ず既存企業が勝つ
・破壊的イノベーションの状況では、既存企業が極めて頻繁に失敗する。
⇒新興企業が採るべき戦略は「破壊的戦略」
顧客の「十分良い」を製品技術が追い抜いているとき、ローエンド市場が標的となる。
⇒既存企業は構築された「資源配分プロセス」により上位市場へ方向付けられる。⇒新市場やローエンド市場を防御する意欲はほとんどない(非対称的モチベーション)
持続的イノベーションも重要・・・だが、新成長事業構築の手段にはなり得ない。(既存企業に負ける)
破壊的イノベーションは相対的な概念⇒自分にとって破壊的でも他者(一部の既存企業)にとって持続的ならその既存企業に負ける。(よって白紙にすべき)
○二種類の破壊
・ローエンド型破壊・・・利益率の低下が認められない既存企業はローエンドから撤退する。
・新市場型破壊・・・「無消費」に対抗するもの。新顧客の創造。(既存企業がそもそも対象としていない顧客)
⇒実際には二種類の戦略のハイブリッド型が多い
判断のための三つのリトマス試験紙(P.64~67)
・技術開発でスキルやお金を持たない人が用事を済ませることが可能になるか?(新市場型かどうかの質問)
・性能面が劣るが十分良い商品を安価で購入する顧客がいるか?(ローエンド型の試験)
・業界大手企業「すべて」にとって破壊的か?(新市場型の質問)
3.顧客が求める製品とは
市場細分化・・・属性基準では適合しない⇒「状況」に応じて見定めるべき
市場のとらえ方で製品機能が変わる(P.103)
・・・しかし、つい「属性」基準で的を絞ってしまう。
・資源配分プロセスに関する理由(的を絞ることへの恐れ、定量分析の要求)
・小売チャネルが属性に基づいた構造(4.でも言及)
・広告の経済学(ターゲットを状況でなく顧客に合わせてしまう)⇒適切なのは「目的」ブランド
顧客はやりたくない「用事」には手を出さない⇒不要な機能を付加する「属性」ベースは適合しない。
4.自社製品にとって最高の顧客とは
⇒新規参入企業なら「十分満足」か「無消費」
「無消費」の四つの要素(P.137,138)
・ある用事を片付けたいが、金やスキルがないので解決策がない
・「何もない」状態と比較するので製品への要求ハードルがかなり低い
・シンプルで「誰でも」使える、しかも安価なら「無消費」層にもヒット
・破壊的イノベーションは新しいバリュー・ネットワークを生み出す。
「脅威」と「機会」
「脅威」の方が反応が大きく「脅威硬直」と呼ばれる状態を引き起こす。
脅威と機会の使い方(P.143)・・・資源配分プロセスでは「脅威」でトップからコミットメントを引き出し、「機会」と捉えられる自立的な組織に任せる
○小売や流通も破壊を通して成長しなくてはならない(3.でも言及)
5.事業範囲を適切に定める
○コア・コンピタンス
その定義にこだわって有効な市場を見逃すことがある(IBM⇒インテル、マイクロソフト)
○統合するか外注するか
製品アーキテクチャとインターフェース(P.156)
・相互依存型⇒「十分でない」世界に適合⇒統合型企業が向く
・モジュール型⇒「十分」な世界、オーバーシューティング(顧客が機能向上に対価を支払わない状況)に適合⇒特化型企業が向く
⇒企業は相互依存型、モジュール型のどちらにも移動する。(予測可能な因果関係 P.167)
⇒状況に適合した(調和した)アーキテクチャ戦略が必要となる。(ちょうど良いときにちょうど良い場所にいること)
6.コモディティ化をいかにして回避するか
コモディティ化と脱コモディティ化は並行して起きる。
コモディティ化のプロセス(P.186)、脱コモディティ化のプロセス(P.189)
魅力的利益保有の法則(P.214)⇒バリュー・チェーンのどこかに利益はある(P.191)
コア・コンピタンスの危険性(顧客重視、ROA重視)⇒事業の切り離しに繋がってしまう
ブランドも魅力的な場所の移動により移動する。(「十分でない」から「十分」に変わったタイミング)
7.破壊的成長能力を持つ組織とは
○能力・・・資源、プロセス、価値基準
・資源・・・例えば「人材」⇒「ライトスタッフ」の不適合性(持続的状況なら有能でも破壊的状況なら無能)⇒経験の学校で学んでいないから
・プロセス・・・特定業務では能力を示しても、他の業務では「無能力」を示す⇒資格化されないため、気づかない
・価値基準・・・組織の各段階(役員、管理者、一般社員のそれぞれ)の価値基準がある。
「制約」・・・組織が「できない」ことを定義する。
価値基準がさらに「企業文化」を形成⇒変革は相当困難になる。
破壊的な業務に適した組織を選ぶ
適合するプロセス、価値基準と組織、チームのマッチング(P.237)
○新しい能力を生み出す
資源(人材)、プロセス、価値基準の各面で
⇒方法の一つとして「買収」⇒ポイントは統合し過ぎないこと(組織の特性を活かす)
8.戦略策定プロセスのマネジメント
○戦略策定のプロセス(P.259)・・・意図的戦略と創発的戦略
意図的戦略が有効になるための3つの条件①成功に必要な条件を把握②全従業員にとって理にかなう③予期しない状況がない
資源配分プロセスの影響⇒各役職の段階でふるいにかけられる⇒戦略が決定「される」
創業者が「意図」した戦略どおりに進むことはほとんどない⇒旨くやり遂げるのは予期しない状況のための資金を残しておくから(全力投球し過ぎない)
2つのプロセスを並行して実施する状況はよくある⇒しかし放置すると「意図的」に偏る
⇒経営者の力点①組織のコスト構造②発見志向計画法③状況に応じたプロセスの適用(P.273,274)
「創発」を薦めるための「発見志向計画法」(P.279)
9.良い金があれば、悪い金もある
○各段階において適した資金がある
事業の生成期は「成長は気長に待つが、利益は気短に急かす」タイプが適している。
⇒意図的戦略の状況になれば「成長を急かすタイプ」が適するようになる。
○不十分な成長から生じるデス・スパイラル(P.288~294)
①企業が成功する⇒②企業は成長ギャップに直面する⇒③良い金は成長を待ち切れなくなる⇒④経営陣は一時的に損失を容認する⇒⑤損失が増大し、縮小を促す
・・・成長エンジンを作動させるための方針(本業回帰に備える)
・本業が堅調なうちに新事業を定期的に立ち上げるor所定のリズムで買収する
・早期の成功を要求する(財政的援助を最低限に)
10.新成長の創出における上級役員の役割
○上級役員の責務
・破壊と主流のインターフェースの監督⇒「状況」を読んで主流プロセスが適合しないときに遮断する。
⇒多角化の文化があるとこのコントロールの補完的役割を果たす
・破壊的成長エンジンをつくり出す
①必要になる前に始める
②上級役員による監督
③専門家チーム「始動者と形成者」
④部隊の訓練(P.335~338)
終章:バトンタッチ
○「理論を使うなんてとんでもない」という人は・・・実は「理論家」であることが多い(しかも稚拙な)
○助言のまとめ(P,345~349)